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読み聞かせをした「北欧での実話」を紹介します
雪の降るクリスマス・イヴのこと、出産が間近に迫った一人の女性が、宣教師の家を目指して急いでいた。助けてもらいたいことがあった。
もう少しで宣教師の家だというところに、谷があった。谷には橋がかかっていて、この橋を渡れば、宣教師の家はすぐだった。
ところが、橋のそばまで来たとき、彼女は雪に足をすべらせた。突然、激しい陣痛が彼女を襲った。もう歩けなかった。先へ進むことは無理だと悟った彼女は、這うようにして橋の下に身を寄せると、凍えるような雪のなかで、一人の男の子を産んだ。
橋の上を通る人もなく、助けを呼ぶにも、振り絞る声さえなかった。彼女は、産着どころか、自分の着ているもの以外には、なにも持っていなかった。
雪の中に身を横たえた彼女は、自分の着ていたものを次々に脱いでは、生まれたばかりの赤ちゃんを包んでいった。赤ちゃんは、繭のように包まれて、力尽きた母親の胸に抱かれていた。
次の日の朝、宣教師は、クリスマスのプレゼントを配るために家を出た。ところが、橋のところまで来ると、車が故障したのか動かなくなった。
しかたなく車を降りた宣教師は、かすかな赤ちゃんの泣き声を聞いたような気がした。
声のするほうへ寄ってゆくと、なんとしたことか、橋の下で、繭のようにくるまれた赤ちゃんと、その繭を抱きかかえるようにして、すでに冷たくなっていた裸同然の女性を見つけたのである。宣教師は赤ちゃんを引き取って育てることにした。子供は成長し、やがて自分の母親のこと、自分が発見されたときのことを、しきりにたずねるようになった。少年は12歳の誕生日を迎えるクリスマスには、どうしてもお母さんのお墓に行きたいとせがむようになった。一度も見たことのない、母親の墓だった。
墓は、雪に埋もれていた。少年は、一人で祈りたいから、少しのあいだ、ひとりにしてほしいと言った。宣教師は彼をひとりにし、遠くで見守っていた。
少年は、しばらく墓の前に立っていた。少年の背中が、激しく震えていた。泣いていた。
少年は、やがてていねいに墓の雪を手で払うと、なにを思ったか、自分の着ていた服を脱ぎはじめ、それで母親の墓を包んでいった。
宣教師は驚き、まさか全部脱いだりはしないだろうと思っていた。しかし、少年は身につけていたもののすべてで、すっぽり墓を包むと、震えながら墓の前にうずくまった。真っ裸だった。風邪をひいてしまう。宣教師が駆け寄ろうとしたとき、裸の少年が一度も会ったことのない母親に向かって泣き崩れ、叫ぶのを聞いたのである。
「お母さん、お母さん、僕のために、これよりも、これよりも、もっと寒かったのですか!」
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